摂食障害
摂食障害の治療は、薬物療法だけでは不十分であり、各種ガイドラインでも認知行動療法、対人関係療法が推奨されています。当クリニックでは、①心理教育(疾患教育)プログラム(30分×4~5回。カウンセリング枠)、②精神療法プログラム(Christopher Fairburnの認知行動療法を簡略化したものに、摂食障害から回復したセラピストであるCarolyn Costin、Gwen Grabb、 Lindsey Hallらのプログラム、動機づけ面接法を取り入れたもの。保険診療で毎回10-15分程度、毎回ホームワークが出されます。ホームワークをやってくるのが難しい方は、カウンセラーとカウンセリング枠で時間をかけて取り組むこともできます)が治療の柱となります。なお、これらの治療を受けるためにはBMI(※)15以上を必要とします。定期的な身体診察および検査につきましては、必要に応じて連携している身体科クリニックをご紹介できます。また、ご家族はご家族向けのセミナー(イギリスのモーズレイ病院の家族支援セミナーに準拠したもの)を受けることができます。
※BMI=体重kg ÷ (身長m)2
【院長から伝えたいこと】
『摂食障害は自分の友人でした。ストレスから守ってくれるクッション・安全装置で、他のやり方がわからなかった時の表現方法でした』
これは摂食障害から回復した患者さんの言葉です。
摂食障害は実際には人生の他の問題、多くは‘感情の飢え’への対処方法であることが多いのです。‘感情の飢え’とは、理解されたい、愛されたい、自分の価値を感じたい、人生に意味を見出したいという心の叫びです。摂食障害は ‘心の飢え’にフタをしめる方法なのです。摂食障害という方法を選べば、体重や体型、自己嫌悪、孤独感、恥ずかしさで頭が一杯になり、‘心の飢え’による苦痛を感じずに済むことができるからです。
摂食障害が果たしている役割を理解することは、自分自身を知り、いたわることにつながります。これからのあなたの目標は、あなたが本当の自分を知り、表現できるようになることです。摂食障害によってあなたの正直さ、奉仕の心、無条件の愛情が眠らされていませんか?あなたにはありのままの存在で受け入れられ、大切にされるだけの価値があります。あなたがありのままの自分を表現することには多くのメリットがあり、人生を有意義で楽しく、生産的で創造的なものにすることにつながっていきます。
当クリニックの精神療法プログラムは、あなたが自分自身をよく知る努力をしていくことをサポートするものです。あなたは今、摂食障害の治療を受けるのは恥ずかしいと思っているかもしれません。しかし、このホームページを見た今こそ、それに打ち克ち、治療の門を叩く時です。治療を通じて、他人を信頼して関わる方法を学び、セラピスト(治療者)と関係性を作っていく過程は、あなたの人生の多くの面に肯定的な影響を与えるものです。治療を受けることで、あなたが人生に対処するために用いる方法は、摂食障害ではなく、別のものに変わっていくはずです。あなたは摂食障害以外の方法を選ぶことができるのです。
■摂食障害の心理教育(疾患教育)プログラムは30分×4~5回程度で、内容は以下です
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- ・過食症はどんな病気?
- ・過食行動の特徴
- ・代償行動とは?
- ・過食や代償行動で身体にどんな影響があるか
- ・なぜ過食症となるのか
- ・食生活リズムの正常化
- ・食事時の工夫
- ・新しい食べ方は、新しい考え方を必要とします
- ・マインドフルな食べ方
- ・‘健康的な食べ方’のガイドライン
- ・新しい食べ物を取り入れる
- ・食べ物と食べることへの新しいアプローチ法
- ・過食を減らすための生活上の工夫
- ・過食の代わりにすぐにできること
- ・過食をしないための短期計画
- ・過食・嘔吐してしまった場合の栄養補給
- ・体重測定について
- ・運動について
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- ・体形へのこだわりについて
- ・あなたのボディ・イメージを改善する方法
- ・ボディ・イメージを向上させるためにできること
- ・マスコミの影響に気づく練習
- ・あなたは誰に似ていますか?
- ・マインドフルに自分の体を見よう
- ・症状モニタリング
- ・過食後に取り組むこと
- ・更なる過食後の振り返り
- ・心理面での取り組み
- ・現実的な目標を設定しよう
- ・拒食で身体にどんな影響があるか
- ・拒食の後遺症
- ・拒食に移行した場合の食事の工夫
- ・拒食からの回復時に一時的に起きること
- ・拒食から回復した患者さんの声
- ・回復について知ろう
- ・自分を励まそう!
■摂食障害の精神療法プログラムのカリキュラムの例は以下です
(『摂食障害から回復するための8つの秘訣)』キャロリン・コスティン著、星和書店、
『過食症:食べても食べても食べたくて』リンジー・ホール著、星和書店より抜粋)
・自分は今、どの段階にいるか
・回復への動機を認識し、探究し、強化してみよう
・回復した時の私の一日
・摂食障害の‘部分’にお礼の手紙を書こう
・摂食障害の‘部分’の思考を書いてみよう
・摂食障害の‘部分’と、健康な‘部分’を対話させてみよう
・健康な‘部分’からの言葉を書いてみよう
・摂食障害の‘部分’にお別れの手紙を書こう
・ボディ・イメージを探ろう
・あなたの特性のプラスの部分と、マイナスの部分について考えてみよう
・本当の問題を見極めよう
・偏った考え方について理解を深めよう
・偏った考え方と対話してみよう
・気持ちについて考えてみよう
・気持ち日記をつける練習をしよう
・反対の行動について理解しよう
・自分のための救急箱を作ろう
・あなたの食べ物の決まりを見つけてみよう
・あなたの食べ物の決まりを検証しよう
■摂食障害の家族セミナーのカリキュラムの例は以下です
(参考文献
『モーズレイ・モデルによる家族のための摂食障害こころのケア』ジャネット・トレジャー著、新水社、
『モーズレイ摂食障害支援マニュアル―当事者と家族をささえるコラボレーション・ケア』ジャネット・トレジャー著、金剛出版)
・基本的にしてはいけない接し方を理解しよう
・感情のコーチは何をするのか理解しよう
・摂食障害に対する家族の感情面・行動面での反応を振り返ろう
- クラゲタイプ:苦悩や怒りで強烈に反応する
- ダチョウタイプ:感情を否認したり撤退したりする
- カンガルータイプ:過度に保護的で、あらゆる役割を引き受ける
- サイタイプ:過度に支配するような態度を取る
- イルカタイプ:ほどよく指示を与える
- セント・バーナードタイプ:温かさと穏やかさを示す
・家族にとってどのような手助けが必要なのかを話しあおう
・患者さんのことで、耐えられること、耐えられないことについて話しあおう
・患者さんとのコミュニケーションのために、動機づけ面接法を学ぼう
・家系図、年表(摂食障害となった前後を中心に)を作成し、家族を紹介しよう
・家族の長所と将来像について話してみよう
・摂食障害患者の親/兄弟/パートナーでいることはどういうことか、摂食障害の患者と一緒に暮らすのはどういうことかをテーマに作文を書こう
・患者さんに向けた手紙を「あなたという存在が意味するもの」というテーマで書こう
・患者さんが摂食障害のままでいたい理由、摂食障害のままでいたくない理由にどんなものがあるのかを知ろう
・患者さんに対する見方、摂食障害に対する見方、自分に対する見方をどう変えていけばよいのかを知ろう
・再栄養、食事プランについて学ぼう
・食事サポートに必要なスキルを学ぼう